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「ごっ……誤解っ!」
「ああっ!?何がっ」
誤解されてたのは俺の方だろう。
「私は津田さんと付き合ってないっ」
「はあっ!?」
思いもよらない三崎のカミングアウトは、俺に混乱をもたらす。
うまく状況が呑み込めなくて、思わず三崎を凝視してしまった。
上目遣いに見つめてくる三崎の目は、今までの頼りなさが消えているように感じる。
「私と津田さんは何もないの」
ハッキリとそう告げられると、俺の中では困惑しかない。
何もないってどういうことだ?
まだ何もしてない……ってことか?
今日、津田さんの家に行く予定だったから、まだ何もなかったと。
そういう解釈でいいのだろうか。
「いろいろ問題とかあったから返事が遅くなったけど、ちゃんとお断りしてるの」
「…………」
いやいや待てよ。
お前は昨日、俺の前でハッキリ津田さんに好きだと言ったじゃないか。
あれを聞いたから俺はもう駄目だと悟ったのに。
「私は最初から…柴垣くんだけが…好きなの…」
…………ねぇ……お前今……何言ったの?
「本当よ?」
何も考えられずに固まっている俺のスーツの裾を、遠慮がちに引っ張られて我に返ると。
そこには頬をピンクに染めた愛らしい三崎が確かに俺の前にいる。
そんな顔を見せられたらもう、俺には抱きしめることしかできなかった。
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