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「おや、どうかされましたか?」
「……織田さん?」
いきなりのテンションの落差に純も賢治も不思議そうに振り返る。
「なっ、なぁ。その子って……」
そう織田が尋ねた瞬間――。
「賢治さーん、純さーん」
「おっ、噂をすれば……」
「来た様ですね」
ついさっき救急車を見送った夢莉が賢治と純に駆け寄った。
「えっ」
「どうされました? 夢莉さん」
「…………」
「織田さんもどうされたんですか? 二人揃って、固まって……」
夢莉は、織田の姿に気が付くと見る見るうちに驚きの表情へと変化させ、そして――――。
「とっ、父さん……?」
「…………」
夢莉は「そのまま思ったことが思わず口からポロッと出てしまった」という様な小さな声で呟き、目の前にいる織田を見て固まった。
「――えっ?」
「そっ、そうなんですか?」
純も賢治も驚きの表情を浮かべながら、夢莉と織田を見比べる。
この反応は当然だろう。
なぜなら夢莉は賢治に『ここに来た理由』は話したが、父親に関する情報は何一つ話していない。
それはもちろん、父親の現在の名字だけでなく、職業に関する事も含めた何もかも全てである。
「……」
しかし、顔写真に関して言うと実は、夢莉の父親である織田は自分自身を撮られることは嫌っていた事もあってか、ほとんど写真が残っていなかった。
だから、夢莉はここに来て捜し始めても「この人を知りませんか?」という聞き方をしたくても、出来なかったのだ。
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