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気付いた頃には、フレイラは死んでいた。
あばずれに付き従う糞のような女は死に果てていた。
死に逝く間際に、理解してくれただろうか。
理解せず、逝ってしまったのだろうか。
「お疲れ様です、魔王閣下」
「…………ハンティノラか」
我が同胞、ハンティノラ。黄金色の角を額に生やし、鋭き爪を有する獣人種。
こと戦闘に於いて彼女の右に出る者はいない、俺を除いての話だが。
「軍の準備は滞りなく完了致しました、奴らにやられた同胞は雑兵に過ぎません。あとは魔王閣下の下知さえあれば、今すぐにでも」
戦闘だけではなく、ハンティノラは全てに於いて優秀だ。容姿もさることながら、どんな場面であっても自身の能力を存分に発揮できる、優秀で美しい女。
「人間共の様子はどうだ」
「大国の人間共は屈強たる壁を要する国に籠城しています。ですが小国の守りはざるです、半日もあれば殲滅は容易いかと……」
大国は後回しか、まあいいだろう。徐々に、徐々に、奴等の全てを呑み干してやろう。
真の恐怖を与えてやる、我が主人の名に賭けて。
「では行くか、ハンティノラ。後ろは任せる。俺の後ろにしっかりと付いて来い」
「……はいっ。我等が主人の名に置いて、私は一生涯貴方様のお側に居続けます」
さあ往こう、奴等の全てを、あばずれ女神の愛する総てを破壊しに。
殲滅だ、皆殺しだ、一人も逃がさん。一匹たりとも逃がしてなるものか。
我が主人の命に遵守し、総ての敵を殺し尽くしてやる。
阿鼻叫喚の嵐の渦を、絶命の雷鳴を、この大地全体に響かせて─────世界を紅く染め上げよう。
見ていて下さい、我が主人よ。
真に世界を愛する者よ。
貴方の願いは叶えます、俺の全てを犠牲にしても。
この世の総てを犠牲にしても。
女神を騙る痴れ者に、神を名乗るあの愚者に、それを教えて差し上げましょう。
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