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その途中、女性は息を整えているラナーシャへも声をかけていた。
にこやかに、穏やかに声をかけられたラナーシャ。
あまり慣れていないのか、身体を強張らせて照れていたのがわかった。
「ショーゴ、お疲れ様。すぐには動けない?」
「ああ、ミスティこそお疲れ様。怪我はない?」
ずっと前線で魔物と対峙してきたミスティは、汗で張り付いた髪を手でかき上げる。
しかも、最後は放術で隙を生み出すことに貢献している。
彼女も疲弊はあるはずなのに、気丈に振舞っている。
「怪我はないわ。それにしても、やっぱりすごい力ね。貴方ならやってくれるって信じてた」
にっこりと、とても妖艶な笑みを向けられたことが照れくさかった。
「いや、俺は何も……ラナーシャのおかげだよ」
そのラナーシャはすでに次の戦場へと意識を向けている。
「気を抜くにはまだ早いわね。私も行くけど、ショーゴは少しでも回復させてから参戦した方がいいわ」
気を引き締め、表情を改めてミスティが再び剣を手にする。
「わかった。……ミスティ!」
今にも駆け出そうとするミスティを、思わず呼び止める。
「……あの、気を付けて」
「……うん。ありがとう、お互いにね」
今ここが戦場の真っ只中とは思えないほど穏やかで……なんと言うか、とても綺麗だった。
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