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仕方なく、一つ開いていたはきだし窓から、中を覗き込むと、フロアの真ん中に見慣れないものが立っている。
一瞬人が立っているのかと見間違えて私はビクッとした。
しかし、それは人ではなくウエディングドレスだった。
かえでさんが明日着るドレスだろう。
(すごい、綺麗)
初めて見る本物のドレスの美しさに、私の目は釘付けになった。
その魅力に引き寄せられるように、ふらふらと入室し、
ドレスを自分の体に当ててみようとしたが、背丈が足りず、うまく出来ない。
仕方なく作業用の椅子を持ってきて、その上に乗り、ドレスの後ろから顔を出して鏡を見ようとした時、
バランスを崩し、ドレススタンドと共に後ろにひっくり返った。
(痛た……)
私は強く打ち付けた腰をさすった。
(まずい)
きっと派手な音がしたのだろう、人がやってくる気配を感じた。
不法侵入した上に、大事なドレスにいたずらするなんて、
さすがのシンさんも許してはくれないだろう。
(とりあえずこの場を離れないと……)
急いでドレスを起こすと、何か小さな物が下に落ちて、部屋の隅に転がっていった。
拾って掌にのせて見ると、それは小さな青い薔薇のブローチだった。
ドレスのどこについていたのか検討がつかない。
そうしている間にも、誰かが入室してきそうで気が気でなかった。
私はそれを握ったまま逃走した。
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