それぞれの気づき

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俺はどうにも厄介なものを引き受けてしまったらしい 「オラとっとと寝ろ、こっちは仕事が残ってんだよ」 葵「ねてはいけぬ…!奴がくるんれる!!ぬぁぁぽんぽんしないれくらはいい」 「おーおーとっとと寝ちまえ…意地でも寝ねえ気だなお前」 葵「ふぬぬぬぬぬ…!」 斎藤が去り暫くした頃、布団を敷いた葵に諦めた顔をした土方は自分の布団に葵を放り込み上から叩いていた だが一向に寝る様子のない葵は自分の手で目をこじ開けながら意地でも寝ないという姿勢である 子供の面倒なんか見たことのない土方は、とりあえず叩いておけば寝るだろうと浅い考えをしていたらしい 「はぁぁ…もう捕まっちまえよ。ねみいなら我慢すんな」 葵「フグゥ…れも、土方はんもがまんしてお仕事してまふ」 「…俺ァ別に眠かねぇんだよ」 葵「うそれすよ〜!おめめ少しらけ赤いれしょ?」 そう言い自分の目から手を離した守村は俺の目元に指を這わせながらそう言う。少しだけ頬を膨らませながらこちらを見るソレを見つめた俺は、小さく息を吐いた 餓鬼みてぇな顔をしやがる 「寝ろ」 葵「土方しゃ…土方はんはぁ?」 「しゃんでもはんでもどっちでもいいわ。俺ァお前が寝たら寝る」 葵「んぇ……じゃあなんか、おはなししてくらはい!」 「話しだァ?」 むんずとその指を掴み布団の中にしまい込むが、葵はその手をまた出しながら目の前で手遊びをし始める さっきからそうだが、此奴は何でこんなに自分の手で遊んでやがるんだ 話と言われても何を話せばいいかと考えつつ、黙りながらその手を見つめていると葵はそれに気がつき、にぱっと笑いながら此方に突き出す 葵「これねぇ、かえるはんなんらよ!」 「かえるはん?…蛙には見えねぇぞ」 葵「みえますぅ!きれいなこころでみんるれふぅ!」 「誰の心が汚ねえって?」 葵「むひゅう…ふへへ、へんな音〜」 ブゥ!と頬を膨らます葵の頬を掴めば変な音が漏れる。それを聞いた葵は楽しげに笑いながら蛙と言ったその手をパクパクと動かした …蛙ねぇ 「此処が目で、こっちは口か?」 葵「せーかぁい!土方はんあったまいーい」 「…ッハ!確かに、蛙かもな」 葵「あ〜!土方はん笑ったぁ」 子供のように楽しげに笑う そんな顔を見て思わず声を出して笑ってしまう。葵はそれを見て更に嬉しそうに笑うが、土方は一瞬だけ口を紡いだ後、息を吐きながら又も笑った こうしていると、かなり幼くなる 葵「今日はいい日れふ!土方はんがいっぱいね、わらってくれるんれす」 「…何で俺が笑うと嬉しいんだよ?」 葵「え〜?みんな、わらってたほうがすてきらもん」 「ほぉ、みんなか」 葵「あ、やきもちぃ?」 「ぶん殴るぞ」 ニヤリと意地の悪い笑みを浮かべる葵に布団を被せると、女特有の高めの声を出しながら楽しげに笑われた …こりゃあ、もう酒は飲ませられねぇな 何処をどう見ても女にしか見えない、そう考えた土方が暫く音を立てながら叩き続けると…漸く葵は声を漏らさなくなる ゆっくりと布団をめくってみれば、其処には小さな寝息を立て眠る少女の姿が目に写った
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