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男友達
西崎香織とは中学の入学式で出会った。
たまたま同じクラスで、教室では席が隣同士ってだけの縁だが、話すと色々趣味が似通っていて、俺達は性別関係なしにあっという間に友達になった。
お互い、言いたいことを平気で言い合って、時には派手に喧嘩もする。そんな俺達だったから、周りも、カップル扱いなんてまったくしなくて、俺と西崎は性別を越えた親友と周囲に認識されていた。
実際、俺もあっちもそう思ってた。
お互いに男や女だなんて感覚は持ってなかったし、色気を感じるとかもまったくない。
そんな俺達はツレ同士がなんとなく一緒の高校に行こうと語るノリで同じ高校に進学し、そこでも周りに性別越え親友として扱われていた。
でもある時から、その関係性に変化が生まれたんだ。
きっかけは西崎からの、思いもよらない相談だった。
「隣のクラスの北山くんて、アンタと同じ部活だったよね? 彼って部ではどんな感じ?」
そんな一言を口切りに、気づけば俺は北山について質問攻めにされていた。
何でそんなに北山のことを聞くのか。本気で俺は判らなくて、そのまんま口にしたら、西崎は顔を真っ赤にした。そして、これまで見たこともない表情で言ったんだ。
「そんなこと…いちいち聞かないでよ」
どくんと、心臓が震え上がるのが判った。それと同時に、知ってはいたけど理解していなかった事実に気がついた。
西崎は…『女の子』なんだ、と。
あれからも、俺達は喧嘩したり仲直りしたりと相変わらずで、周りの扱いは性別越え親友だ。
西崎もこれまで通り、俺から色々北山情報を引き出そうとするし、俺も可能な限りそれに応じている。
だって俺達親友だもんな。でも、俺は気づいちゃったよ。確かな誰より仲はいいけれど、俺はあくまで男友達だってことに。
そう。『友達』だけど『男』なんだ。隣の存在が『女の子』に見えるようになっちゃったんだ。
北山のことはきちんと応援してるけど、もしそれがダメだった場合、俺が、『友達』の肩書きすてて隣にいるっていうのはダメかなぁ?
そんな、できもしない提案を、相談のたびにこっそり思い描くのが俺の現状だ。
男友達…完
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