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向井は既に落ち着き払って、定食を食べていて。
みんなはなにも気づかず、席に戻っている。
ただひとり、たまたま社食に来ようと杏たちの近くの窓の外を歩いていた蜂谷を除いては――。
蜂谷はこちらを見、固まっていたが、やがて、なにか呪文のようにブツブツ言いながら、社食に入ってきた。
怖いよ、と杏は思わず、目で追うが、向井は素知らぬ顔だ。
恐らく、蜂谷が見ていたことにも気づいていない。
……律。
繊細で可愛い律が、課長のような大胆な人でなしになれる日は来ない気がするんだけど、と思いながら、杏も食事に戻る。
カン、と叩きつけるような音がして顔を上げると、蜂谷が立っていた。
「此処、いいですか?」
と仏頂面で言う。
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