君の瞳に映る僕の瞳の中にもきっと君が

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気だるい朝。 特に月曜の朝は、また一週間が始まるのかとどんよりする。 地下鉄の密閉された中なら尚更気分も重くなる。 その朝をそれ程嫌に感じなくなったのは彼女のお陰なのかもしれない。 混雑するのが嫌で、一時間ほど早めに家を出る。 大学近くのカフェで朝食を食べてから講義に出るのがいつもの流れとしていつの間にか定着していた。 そして今日も僕はその地下鉄に乗る。 昨日の日曜日、よく行く本屋で偶然彼女を見掛けた。 もっと顔がましだったら、もしかしたらその時に何かのきっかけだって作れたのかもしれない。 でも、僕が出来たことは見た目より背が小さい彼女が一番上の本棚の本を取るのに苦戦していてそれを取って渡してやることだけだった。 簡単な、会話とも呼べないやり取りをすると、あっさりと僕の方から退散した。 怖がらせたくなかったから。 嫌われたくなかったから。 嫌われるくらいなら、いっそこのまま僕の存在など気付かないでいて欲しかった。 出来ることならもっと、朝の癒しとして彼女を見ていたかった……。
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