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「俺は、人に前を向かせる力――それが神なら信じることができる」
言葉を失う薫を見て、瑛太は満足そうに頷く。
彼はスッキリした顔で奥の院の裏側へまわる。
そこにはたくさんのミニチュアの鳥居が置かれていた。稲荷山の所々で見かけた願掛け鳥居だ。
「稲荷山に登らない時は、ここで山の御神体にお参りできるらしい」
「えっ、じゃあここで済ませられたとか!?」
早く言ってよと思う。
「でもそういうふうに楽したら、あとで全力を尽くさなかったって結局後悔するだろ?」
薫は頷く。末廣神社の前でカミサマに確認できたのだから、今回は登って正解だったと思った。
「カミサマがお稲荷さんじゃなかったってことは、ここにはお稲荷さんが居るってことだよな」
「あ、じゃあ、もしかしたら、今空っぽの神社があるかもしれないってこと!?」
はじめて気がついた。
大問題じゃないかと思ったけれど、
「何の問題もないだろ。仕事しないカミサマなんだから」
と瑛太は罰当たりなことを言う。
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