504人が本棚に入れています
本棚に追加
/226ページ
気が遠くなったのは一瞬だった――と思っていた。
だが、目を開けると、そこはいつの間にか日陰で、目の前にはひどく苦しげな瑛太の顔があった。
「……薫!? 気がついた!?」
瑛太の顔には眼鏡がある。なにより、こんな顔はカミサマはしない、と薫は思い、
「瑛太……?」
と尋ねると、瑛太は「……よかった……マジでよかった」と絞り出すように言った。
起き上がろうとすると、肩を押さえられ止められる。背中が痛いのはなんでだろう――と思った薫は、直前のことを思い出した。そうだ。倒れた拍子に背中を打ったのだった。
「え――あれ? カ、カミサマは?」
瑛太は一瞬息を呑み、泣くのをこらえるような顔をした。
「……今さっき、アイツ、出ていったよ」
「そっか」
やはり日光のせいだろうか。いつものように眠ってしまったのだろうと軽く頷くと、
「もう出てこないと思う」
と瑛太は言った。
最初のコメントを投稿しよう!