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 脳みその奥にじゅわぁ、と疲労がしみ込んで、呆けて今の今やっていることがこつん、と抜けた。空白の刹那を軽く頭を振って追い出して頭を再起動し、後片付けをやっつける。夢中で一仕事終えて、どうにかこうにか一山越えた、それは心地よい充実疲労だった。  そして一瞬後、それを死ぬほど嫌だと思った。  僕が僕自身を投げ打つのがこの仕事である現状に、自分以外に向けようのない憤りを覚える。何者にもなれずこの場で燻る情けない僕の怠惰を恨んだ。  仕事に罪はない。んなこたぁ解ってるさ。胸張って命張ってこの仕事をする奴だっている。零細企業の弱小事業である分、ひとりひとりの存在感はでかいし、向き合えば面白い仕事でもある。僕は通信販売のウェブサイトを管理し、煩雑なシステムを操り、顧客からの電話の対応をこなし、物流に奔走し、月末には経理の真似ごとまでする。備品を発注して切れた蛍光灯を取り替えたりもする。管理業務から雑用までこなす、バイトだがそれなりの戦力だ。頼りにされているのもわかっている。     
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