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「ポピ――」母が、階段の下から大きな声で呼ぶ。「支度できたあ――?」 「は――い」私も部屋の中から大声で返事する。  下に降りると母は、大きな紙袋と小さなバスケットを私に差し出した。「はい、じゃあこれをお願いね」にっこりと笑う。 「はーい」返事しながら私は紙袋の中を覗き込む。「うわあ、きれい!」  紙袋の中にあったのは、オフホワイトの生地。きらきらと小さな光の粒が表面に輝いている。 「きれいでしょ」母はさらににっこりと目を細めた。「ミヴィズで見つけたの。これをドレスにしてさ、刺繍も入れてもらおうと思って」 「すごーい」私は溜息まじりに言った。「ママの服?」 「うん、ママのはブラウス。ドレスはポピー、あなたのよ」母は指で私の鼻の先をちょんとつついた。 「ほんと?」私は心臓が跳ね上がるくらい嬉しくなった。すっごい! 刺繍入りのドレスなんて、お姫様みたいじゃん!「やったあ! 楽しみい」紙袋を持ったままくるりと回る。 「じゃあ、気をつけて行って来てね」母は腰に手を当てて言った。「バスケットの中に冷たい飲み物とクッキーとか入れてあるから。途中でつまみながらでもいいし」またにっこり笑う。     
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