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「まてっ泥棒!! 巫女! 」
男の怒鳴り声に、彼方と流全は振り返った。
見ると、ラベンダーの中をみのりが笑顔で走っていた。
大事そうに抱えているのは、純白のドレスに身を包んだ美しい女性だった。
「みのりさん、格好良い! 」
流全が口笛を吹いて2人を讃えた。
みのりはトラックの荷台に巫女を降ろして、そっと握っていた手を離した。
そして、2人の方へ振り向いた。
「何してるのですか? 行きますよ」
笑顔で両手を2人に差し出した。
けれど、流全と彼方はお互いに目配せ佇んでいる。
「てか、俺達はここまで道案内しただけだし……」
「他に行く場所は無いのでしょ?」
みのりが2人の身長までしゃがみ、2人の瞳を見つめた。
「私たちはまだ逃げます。
2人もまだ逃げたいのであれば、私は反対しません」
そう言うと荷台に居る巫女の、腰まで伸びた黒髪を優しく撫でた。
「私の―……私の過去に君たちは似ているんです。
私は君たちに私みたいに道を踏み外して欲しくありません」
だから、君たちが良ければ―……、とみのりは両手を差し出した。
巫女は穏やかに3人を見つめている。
けれど、2人は目配せしながら動こうとはしない。
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