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「えっ!本当でござるか。するとご貴殿は徳川家の‥」 「さよう。ワシは隠居の身じゃが、息子の義勝は徳川家の旗本衆じゃ」 「それはかたじけない。ぜひお願いいたす」 「ウム、おぬしがなんとなく気に入ったのでな」と宍戸義正は家に戻り、机の上で書状をしたためてくれた。 「よし、できた。これを持って浜松城へ行くがよい。ただし仕官が叶うかどうかはおぬしの器量次第じゃ」 「宍戸殿、ありがとうございます。このご恩は一生忘れませぬ」 と三郎右衛門は頭を下げた。 「なんの、年寄りの気まぐれじゃ。礼には及ばぬ。そうそう、鍵が欲しかったのじゃろ?その引き出しの中にいくつも入ってるから好きなだけ持っていくがよい」と傍らの物入れを指差した。 三郎右衛門が開けてみると大小さまざまな錠前が入っている。 「では3個いただきまする。お代はいかほどで?」 「代金か?おぬしが適当と思える額をその箱に入れていけ」
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