宮下 唯

【もしもこんな喫茶店があったら】  外観はそこらの喫茶店となんら変わりなく、マジックミラーで覆われているため中の様子が見えない。  そんな排他的な空間が異様な雰囲気を醸し出していた。  ここが巷で噂の“ヤンデレ喫茶”であると妙に納得出来た。    友人に誘われて好奇と邪心を半々に抱えた私は扉前に立ち尽くす。  偽りでいいからイケメンのヤンデレに愛される体験をしたいのと、単純にイケメンと知り合いたい横道逸れた思い。  従来からヤンデレとイケメンは相性の悪い単語と認識している。どうもイコールにならないのが世の真と言うやつか。 カランカラン  友人がドアを押した―― 「いらっしゃいませ」  我先にと出てきたのは世界三大美男と新たに歴史が刻まれてもおかしくないような美形。  そう、確かにイケメンだった。  あ、あれ? 意外とふっつー。  もっと『今まで僕を置いてどこにいってたの? 浮気は許さないよ。その男殺してやる!』なんつー台詞が用意されているのだと思った。  友人の方を見ればイケメンならなんでも良いらしく目がハートだ。  ていうかこの店本当にイケメンだらけで、寧ろイケメンしかいないので私もテンションが上がってきた。 「ご注文はお決まりでしょうか?」 「じゃーこれ二つ」 「畏まりました。オムライスですね」 「ねーねーねーねーケチャップでハートかいてかいて」  只では終わらせない友人がそう注文を加えた。イケメンなお兄さんは嫌な顔一つせず二つ返事で了承した。  これじゃなんかメイド喫茶の逆バージョンみたい。後でアドレス聞いたら教えてくれるかな。  頼んだ料理が机に並べられた。  オムライスの上にはやや歪なハートが描かれていた。あはは、ぶきっちょなのかな、とお兄さんの方を見た瞬間私の顔から笑みが消えた。  ついで、友人の笑みも消えた。  お兄さんの右腕は先程までなかった包帯によってぐるぐる巻き付けられていたのだ。  しかも、うっすらと赤が滲む。 「それではごゆっくり」  イケメンの笑顔がこれほど怖いと思った日はないだろう。  錆びた匂いが漂うオムライスを胃にかき集めた私と友人は早急に会計を済ませてお店を後にした。  “残すのは許さない”とでも言いたげな、私達からぶれない男の視線がなによりも恐ろしかった。   (おしまい)  
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誰得だよwな話ですねはい(´・ω・`) 友人と「ツンデレ喫茶があるぐらいだからそのうちヤンデレ喫茶も出来そうだよね」と言う会話がきっかけでした。 ヤンデレは2次元だから萌えるんですよね(о´∀`о)  

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