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2013/7/1 12:24
アグリア・パーティ 雷鳴が空を粉々に砕いた。 「次から次に……うざいんだよ!」 少年は噛み付くように叫ぶと、大胆にも思える動作で右腕を横凪ぎに振るった。握り締めた剣の軌跡に赤い飛沫が弾け、少年の腕を、体を濡らしていく。 「……気持ちわる」 血の海に沈んだアグリアに侮蔑の視線を落とすと、少年はついっと剣を振り払った。湾曲のない刃に付着したアグリアの血液の大半が吹き飛び、源流へと還っていく。 無上の嫌悪を浴びせる少年に、奇々怪々な醜悪《アグリア》が群れをなして押し寄せる。 「またかよ……」 呆れ半分、喜び半分といった声音で呟くと、少年は僅かに血液が付着したままの剣を正眼に構えた。 「……おっと、なんだ?」 地が揺れる。目の前の三級アグリアの群れの奥、ボスステージの上に待ち構えるボス級アグリアが足踏みをしたのだろう。 体長十五メートルは固いだろうか。筋肉質な図体の上、不格好に丸い頭の中心に据えられた巨大な単眼が三日月を描き、少年を見下し嘲笑う。 「見下してんじゃねーよ、バケモノのくせに」 少年は醜怪を見上げて嘲笑うと、正眼に構えていた剣を左手に移し、腰のポシェットに収めていた真に得意とする武器を掴み出す。 しゅるしゅると丸めていた得物――毛糸を紐解き、先端にくくりつけたシャーペンを一メートルほど垂らせば、そのスタイルが少年にとっての万全である。 「すぐにぶっ殺してやるよ」 不敵な笑みを浮かべると、少年は敵陣にその身を投じた。
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