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幽霊少女と首吊り少年  つまらない講義を透過し、気を使っているのかやたらと遊びに誘う友人達に頭を下げ、装着したヘッドフォンが歌う世界に引き込もって帰宅する。  味気もなければ色もない、そのくせ力だけは奪い取る、まるで白紙を噛み締めているかのように不快な毎日。  ああ、つまらない。つまらなくて、息が詰まって、死んでしまいそうだ。 「たっだいまー……ま、誰もいねーけど」  重苦しい内心とは裏腹に、軽い声が口をついて出る。  そう言えば……アイツは、自然に嘘を吐けるのは凄いけど、それじゃ疲れちゃう。そう言ってたな。  鮮やかな映像が脳裏を過り、ノスタルジーが胸中を埋め尽くす。俺は口元を歪めた。  疲れないんだよ。疲れない、ただ、嘘から得るものは少ない。喋るのに使った分、心の壁が崩れて、隙間が増えてって、穴だらけ。隙間風が入って、出て、壊れてくだけなんだ。  アイツがいた時は、アイツの言葉が力になって、隙間を埋めてくれてた。でも、今はもうアイツがくれたものまでほとんど消えて、すかすかなんだ。 「んなくだらねーこと言ってる場合じゃねーか」  ひやりとしたフローリングに熱を奪われながら、俺はリビングへと向かう。  アイツがいないこの世界は、俺には少し酷しい。
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