加藤

 雲は分厚かった。まるで地球と太陽を隔離せんといわんばかりの形で、そして何より迫力があった。僅かに覗く円形の青空も、その内あの雲によって消え去るだろう。だが幸いな事に、雲も薄らと青色を兼ね備えている。  そんな雲の色と青空の色を掻き混ぜ、更に黒を混ぜたような色をして、湖は存在していた。表面は氷のように艶やかだが、しかし奥底は見えない。想像を絶する程に汚い事が窺えた。  そんな湖の中に枯れ木は突き刺さっている。痩せ細った幹から糸くずのような枝を垂らし、今にも枯れ木は崩れ落ちそうだ。  湖の周りは枯れ木が羨む程の緑に溢れかえっている。いや、緑というよりも苔色か。手で払えば霧散してしまうように淡く、その色は存在している。枯れ木を見下すように緑だった。   三人称みたいな一人称。

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