星月渉

【コメント機能でショートショート】『本屋さんに行きましょう』 「捨てていいから」 三ヶ月振りに元カレに電話をしたら、必要以上に素っ気なくそう言われた。 彼から借りっ放しになっていた本。 歯ブラシや、衣類は簡単に捨てる事ができたけれど、「借りて」いたものは「返さなければいけない」気がして、捨てられなくて、思い切って電話してみたら、もう散々傷ついたはずなのにトドメを刺された気分。 彼に「超絶オススメ!」と言われて借りた本だったけど、実はまだ読んでいない。せっかくだから読んでみようか。 私はコーヒーを淹れて、一人きりになってしまったワンルームの部屋にポツンとあるシングルベッドを背もたれにして、彼がゴミにしてもいいと言った本を読み始めた。 ★…★…★…★ ゴトンと重たい音をさせてゴミ箱が鳴る。 借りていた本は私には良さがサッパリわからなかった。 そうか。そういう事かと自嘲する。「超絶オススメ!」とか言っといて、簡単に「捨てて」とかいえちゃうんだもんねアイツ。 電話をした後の苦々しさは何処かへ逃げて行った。 そういえば、子供の頃読んだ本の話をしていた時に『大草原の小さな家』の話をしたらアイツ鼻先で笑ったんだった。 その時点でアレ? と思わなかったのは盲目になっていたから? 本屋さんに行きたいな。子どもの時、ページを捲る度ワクワクした本を何冊か買いに行こう。 読み終える頃にはきっと、今より元気になってる。 負け惜しみかもしれないけど、私、きっと元気になってる。 end .
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