粉雪亭 寒波

思春期は自我の塊で。   等身大に肥大した少女の自我には、まだ、外の世界は存在していない。 自身が中心の、ごく狭い範囲の、しかも不安定な地動説みたいなもの。   育っていない精神のプールは、捨てることを知らない。 思って思って思って、貯め込んで、行き着く先はゼロクリア。   “先生”は光源氏じゃないんだよ。 そうして、光源氏の生涯唯一の特別なひとは、紫の上ではなくて亡き母上様なんだよ――だけど、彼女には理解出来ないのだ。   だって、彼女は、女で、まだ“少女”だったのだから……。
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