芥川虎之介

カラスは古来、吉兆を示す鳥であった。神武天 皇の東征の際には、3本足のカラス「八咫烏(やた がらす)」が松明を掲げ導いたという神話があ る。日本サッカー協会のシンボルマークはこの八咫 烏である。 この言い伝えから、八咫烏やカラスは家紋としても 利用されており、有名なところでは熊野の雑賀党鈴 木氏が存在する。 カラスは熊野三山の御使いでもある。熊野神社など から出す牛王宝印(ごおうほういん=熊野牛王符) は、本来は神札であり、近世には起請文を起こす用 紙ともされたが、その紙面では、カラスの群れが奇 妙な文字を形作っている。これを使った起請を破る と、熊野でカラスが3羽死に、その人には天罰が下 るという。また、「誓紙書くたび三羽づつ、熊野で 烏が死んだげな」という小唄もある。 長野県の北信地方に伝わる「烏踊り」といわれる民 謡と踊りがあり、足さばきにおいて九種類の型を繰 り返すことから、修験者である山伏が唱えた呪法で ある九字切り(九字護身法)を手ではなく足で行っ たとされる。このことと、山岳信仰を起源に持つ修 験道では、「カラスは神の使い」とされてきたこと と合わせて、この烏踊りは山岳信仰に基づく烏に対 する信仰と修験者の踊りが、民謡になっていったと 考えられている。

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