星月渉

「コメント機能でショートショート」【てるてるぼうずにお願い】 ハヤトは傘を少し自分の頭からずらすと、暗い雨雲を睨みつけた。もう何日も降り続いている雨だった。 先週の土曜日にあるはずだった運動会は延期になり、明日も雨だと運動会は中止になるかもしれないと、ハヤトの担任の先生が今日言ったのだ。 ランドセルも、傘も1年生のハヤトには重たいのに、雨だと余計に重たい気がする。 「ハヤト! 濡れるからちゃんと傘ささないとだめだよ!」 2つ年上の姉のミカにそう言われてハヤトはむっつりと傘で顔を隠した。 家に帰るとミカは真っ先に母親の所へ走っていく。 「お母さん! 見て! 算数のテスト100点だった」 その声を聞いて隼人は持っていた80点のテストをクシャクシャにして手提げに入れて二階の自分の部屋に閉じこもって、先週から作り続けているてるてる坊主を作り始めた。 「ハヤト? おやつ食べないの? お姉ちゃんが、狙ってるよ、ハヤトのおやつ」 「お母さん。明日運動会なくなったら、どうしよう? 僕、僕ね、かけっこだったら、クラスの中で1番速いんだ。ホントに、ホントだよ?」 「あ。じゃあ、お母さんも作るよ。てるてる坊主」 てるてる坊主を作る息子の隣で母親もてるてる坊主を作り始めた。 「ミカも作る!」 おやつを食べ終わった姉のミカも加わり、三人で沢山のてるてる坊主を作った。 カーテンレールにぶら下げる姉弟の姿を見て母親はそっとハヤトに言った。 「お母さんね。運動音痴だから、子どもの頃、運動会ってあまり楽しくなかったけど、ハヤトがこんなに楽しみにしてるの、すごい嬉しいな。でも、ハヤトがかけっこで1番じゃなくても、お母さん、ハヤトの事大好きだからね」 母親の言葉にハヤトは顔が赤くなった。 80点のテスト。本当に頑張って80点だったんだ。お姉ちゃんみたいに100点じゃないけど。お母さんには明日見せよう。 その夜、ハヤトが1番でゴールテープを切る夢を見ている頃、夜空には久しぶりに満天の星々が輝いていた。 . お題提供わきー嫁チャンさん 『体育祭』『長雨』『傘』 .
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渉さんありがとO(≧▽≦)O ちなみに私も日常生活分の運動神経しか持ち合わせておりません(゚~゚;) 体育の授業も運動会も大嫌い! はい、しっかり息子達、特に長男に遺伝してますww
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わきーさんもΣ(・□・;) 運動会もですが、マラソン大会とか、ウォークラリー的な事もきらいでした( ;´Д`)
胸がほっこりする、素敵なお話ですね。 きっとハヤトくんは頑張って1番でテープを切った事でしょう。 そしてそれを見守るお母さんの瞳は潤んでいたのでしょうなぁ…。 息子が小学校最後の運動会のマーチングパレードで、大きな旗を持って行進していた姿にホロリと来たあの日を思い出しましたw それが今や… ┐(´(エ)`)┌
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リリオさん、コメントありがとうございます♪( ´▽`) 今やどんな感じですか?(。-∀-) ニヒ♪ うちの息子も大きくなったら……。(笑)

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