希胡桃 音葉

出だしから好調。一般論を真っ向から否定する主人公の一人称描写がオープニングとは、なかなかレアケースだ。 正直こういった描写が好物な自分にとって、少し怖かったのはこのレベルの描写が序盤まで続いてくれるか、というものだったが、問題なし、安心しました。 また、珍しい表現を使うものだと感心する箇所がところどころ。 世界観と設定は比較的ベタだが、この作品の魅力はやはり心理描写力の高さと、ちょっと屁理屈なのになぜか納得してしまうような主人公の語りだ。 展開や、描き方の基本的な技術はきちんと持っているので、矛盾点や違和感は感じませんでした。 バトルシーンも力を入れているようで、「とにかく理由もなく強い」なんて味気ないものでなく、きちんと戦略を用いている。 魔法が主軸な作品ならではのアクションも見所だ。 さて、こっからはちょっと指摘箇所。 心理描写やバトルに関しては、上記の通り問題はない。問題がないからこそ見落としがちだが、ストーリーや設定が薄い。 はっきり言ってしまえば、ようするに「ありがち」なのだ。 細かく作られているのは確かだが、もはや使い古された設定と展開には、「続きが気になる」という感想には至りませんでした。 斬新な設定や展開などはなく、もう少し何か変わったことをしても良いと思った。 この素晴らしき心理描写に、もう一つスパイスが加われば、きっともっとすごい作品になるだろう。
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