にゃんデッド

  量子力学において、『原子核』内に存在する『陽子』や『中性子』といった『素粒子』は、その存在する座標を方程式によって確定する事ができない(シュレディンガー方程式)。 『この座標に存在する確率が何パーセント』という、まるで野球の投手がストライクゾーンを狙ってボールを投げ込んだ時のような、存在位置の確率分布でしか記述することが出来ないのだ。 しかし、『素粒子』も実体がある以上、一瞬の時間を切り取って『観測』すれば一点に存在しているはずであり、その一点一点の位置関係によって稀に、強い斥力を受けた『陽子』が『原子核』から弾き出されてしまう事がある。 これが、原子核の『アルファ崩壊』である。 この世界に存在する、あらゆる物質の根本である『原子』の挙動。 その不確定な確率的概念は、我々人間という存在に酷似している。 誰が、誰と出会い、誰と別れて誰と位置関係を模索して、そして、誰が弾き出されてしまうのか。 弾き出された者同士がプライドという正の電荷で反発し合い、容易に歩み寄れない事もまた、興味深い皮肉である。 量子力学的事象である原子の挙動と、その巨視的事象である人間の挙動がこうも似通っている事は果たして、偶然なのだろうか。 『シュレディンガーの猫』という思考実験はこの疑問に対して、非常に興味深い結論を示唆している。 一定確率で『アルファ崩壊』を起こす放射性ラジウムと、その『アルファ崩壊』を感知する『ガイガーカウンター』、それと連動した『青酸ガス』の発生装置を用意して密閉した箱の中に、一匹の猫を閉じ込める。 『アルファ崩壊』が起こって『ガイガーカウンター』が作動すると、『青酸ガス』が発生して猫は死ぬ。 果たして『観測』ができないこの密閉された箱の中で、猫は今、生きているか、死んでいるか。 物理学者エルヴィン・シュレディンガーが提起したこの思考実験に関する諸論はあれど、きっとその仔細の多くは論者の哲学に依存する側面が大きいだろう。 いずれにせよ、箱の中で死を待つだけとなったシュレディンガーの猫に僅かの同情と弔いの念を捧げ、私は今日も恋人と枕を並べる。 巨大な確率論的微分関数の渦が幾重にも重なり合うこの世界で出会った、唯一最大の奇跡を胸に抱いて。 【出典】 『夕空と病棟と、境界線』/_novel_view?w=21571763 とある精神病院受付事務員の随筆より
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な、なんじゃこりゃ… 原子核の『アルファ崩壊』の前に脳みそパンクですわ… さらっとついてってる人すげー
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なぬっ、『シュレディンガーの猫』を誰にでもわかるようにと思ったのですが、駄目でしたかっ><;(笑)
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さすが猫の銘を持つだけはあります。もはや哲学ですね。マクスウェルの悪魔を思い出しました(^^)
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エントロピーの減少に関する熱力学の議論ですね(←知らんかったので調べた(笑)もう解決を見ているようですが、ロマンがあって良いです。 シュレディンガーの猫は緒論の中でも、現在の巨視的な物理法則が結果に収束を見るのは経験則で合って証明されてはいないという意見に、共感を覚えました。
観測しなければ波動関数が収束しないのなら、都合の良い結果の時に観測したいものです( ̄∀ ̄) 最近、小林泰三の本でこういった理論を学びました(゜∇゜) なんという屁理屈WW
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たまぷろさんw確かに(笑) ノベリスタ通過なりませんでした(;_;) せっかく応援して下さったのに、申し訳ございません……orz
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