にゃんデッド

非常に美しい文章表現と深い心理描写が目を引く、『ちょっと不思議なお話』。特集入りは伊達じゃない、珠玉の成人向け小説。 野良猫の街、野窓町を舞台に繰り広げられる様々な人物の人生劇は時に悲劇であり喜劇であり、歴史を孕んだ壮大なドラマであり、かと思いきやちょっと現世とは位相がずれたファンタジックなお話もあり、中盤からは物語が僅かに交錯をはじめ……。 誰もがきっと自分の物語を見つける事ができる素敵な短編集だと隣の猫は先ず手放しで称賛します。 思わず唸ったのは、様々な『違和感』の演出でした。章によってはそれは『出来事』だったり『物』だったり主人公の『心理』だったり、『あれ、ちょっとおかしいぞ』と思わせて読み手を引き込むのが本当に上手い。その違和感が最後に綺麗に嵌まってくれるものだから、一話ごとに上質な読後感を味わう事が出来ました。 先ず一点、改善点を挙げるとするならば全体を通して、内向的な主人公が多い気がしました。その内向性が独特の違和感を演出しているのも確かですし、描きやすい人格というものもどうしてもあると思うのですが、『短編集』として頭から読んだ場合、中盤を過ぎたあたりで段々と主人公の思考が読めて来てしまったのが惜しいです。メインで描ける人格の幅を、もう少し広げてみるのは如何でしょうかと思いました。 それからもう一点、本当に惜しいのが、抽象的で申し訳ないのですが『細かい所』です。一例を挙げるなら最終章、お城の門番が粉雪の事を『20にもなっていない』と内心咎めるシーンがありましたが、冷静に考えて20と19の女の子は見分けがつかないと思うのです。そんな事?と思うかも知れませんが、実は、こういう細かい所を勢いで押し通そうとしてしまうのは初心者の中高生クリエイターがやりがちで、ちょっとあるだけで舐められてしまう事が多いです。誤字脱字と同じようなものだと思います。これだけの作品にそんな初歩的な穴があるのは勿体無いと思うので、「冷静に考えるとちょっとこれは……」という理論や心理の小さな綻びに、もう少しアンテナを張られても良いかと思いました。 全体的に非常に完成度が高く圧倒され、楽しく拝読すると同時に大変勉強になりました。最終章、様々な童話がごっちゃになったような粉雪姫の物語は突き抜けた読後感があり、まさにこの不思議な短編集のラストに相応しい短編だと思いました。 完結、おめでとうございます!!
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レビュー有り難うございます。 ですね。内向的な人物が多いのが難点かと…。 実は年末年始、再更新にしようか、新しい短編集にしようか考えている所でして。 反省点を踏まえ、また新しいものに挑戦していこうと思います。 有り難うございます!
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人物、難しいですよね。 私はどうしても自分の人格の一部を切り取ったような薄っぺらいキャラしか書けずに、長い事悩み続けました。 やっとこさある程度書き分けできるようになったの最近です^^; まぁ私のはラノベ系ぶっ飛びキャラなので何の参考にもならないと思いますがwww 千夜七夜は歴史を孕んだ壮大な血脈の物語、一人一人の主人公がどんな人生を歩むのかわくわくしながら読ませて頂きました。私事ですが実は私の家も私で26代目だったりして、もう嫌だ私の代で終わりにしてやるとか思ってたりしたのでグサグサ来ました(笑) このお話はせっかく探偵をテーマにしているのだから、他の章と同じような心理描写に終始せず、本格
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