希胡桃 音葉

怪異ものの作品としてはかなり完成度の高いものとして仕上がっている。 設定としては最近珍しくなくなったもので、人外の専門家が怪異絡みの事件を解決していくものだが、 この解決方法が非常に斬新だ。 まさか既存のホラー映画の情報を駆使して怪異を退治するなど、今までに見たことがない。 ホラーでありながらミステリーの香りすら漂い、理屈と推理で人外を論破する。 実に見事に盛り込まれた伏線を、対峙する瞬間に一気に回収する素晴らしい構成。 しかも人外、怪異の発生にもきちんと条件と理由が含まれていて、 感情をきっかけに推理していく様は読み手を飽きさせない。 理屈っぽい笑いのポイントも見所の一つで、めちゃくちゃなことを言っているようで なぜか納得してしまう屁理屈理論がかなり面白い。 キャラクターは比較的真新しさはないが、それでも個人的に好みな冷血タイプの主人公と、 しっかりしているようでどこか抜けているヒロイン、また、一癖も二癖もある依頼人たち。 指摘箇所といえば、作者様の趣味に走りすぎていてマイナーな映画のタイトルが多すぎて 理解できないところ、対峙するまでの尺が少し長くてだれるところが挙げられる。 文章力は、作品を重ねるごとに上昇する作者様の作品のことだからほとんど問題もない。 これほど矛盾のないミステリホラーは、本当に久しぶりに読ませてもらった。 これからも期待しています。
1件

この投稿に対するコメントはありません