たすう存在

死んだ人間が少しの猶予を与えられ、残された人間に何かを伝える――ある意味、物語の定型のひとつとなりつつある構成ですが、この「君がいたはずの夏」は一味違いました。 主人公の幸は、一度は二人を引きはがした「死」という運命に抗い、そして勝利するのです。 真剣に相手を思いやる彼らの心は「死」さえもものともせず、遂には結ばれます。 意外な、そして素晴らしいハッピーエンドです。 「君がいた」物語ではなく、「君がいたはず」の物語。 陽炎に浮かび上がった幻を、爽やかな一陣の風が吹き消した――そんなふうなイメージを抱きました。 もしかすると跡形もなく消えた神社さえ、二人のためだけの存在だったのかも知れません。 ありがとうございました。
1件

この投稿に対するコメントはありません