清野 熙

107ページまで拝読しました。 人間の血生臭い情念と憎愛が、読む者の背筋に青醒めた戦慄とかして襲い掛かってくるかのような緊張を、見事に描いた秀作です。 恐怖だけが肌に感じ入る、其処に或るのは得体の知れぬ復讐からの傀儡なのでしょうか。怖くて怖くて夢にまで出て来そうです、私は此の作品、夜は読めません。 ○物語の進み方 時系列から揺動が伝わってきます。あっさり過ぎ行きてしまう場面もあますが、其処が諄くなると折角の心理描写がぼやける疑懼も有るので好感を得ました。 ○登場人物の考え方 著者が其々の登場人物の思考を読み手へ明確に届けようとしているのが伺えます。更に読み進めてゆく中でも、場面を移行した後に想起させられるような感覚が湧いてきます。 ○描写 作品に対する良し悪しは、書きと読み手の主観が何処まで噛み合えたか、という命題に至るかもしれません。冷血な力(語彙)に任せて強引なまでに捩じ伏せられる快感もあると思いますが、書き手の意図を上手に文章間に与えているバランスの良さは著者の優れた感性からの術だと思います。 素晴らしい語感とセンテンスを持った文脈です。喉越しが爽やかでゴクゴク呑める甘くて美味しいジュースより、酸っぱさが匂い立つ苦くて濃いコーヒーの方が断然好きです。 但しお書きに成られるからにはより多くの読者をお求めでしょう。そうなりますと万人向けであったか?其処は作者の掟が在り、しきたりを曳いていると云うのならば私なんぞ徒労です。重箱の隅は割愛します。必要とあらば仰ってください、畏れ多くもお伝えします。 『フタリメ』以降が気になって堪りません。一刻も早く知りたい欲求に駆られる巧みなストーリーテラーです。 執筆連載がんばってください。拙レビュー失礼しました。
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