rossony07

お願いしまーす。  やられた。  完全に、してやられた。 「……くそっ」  既に恋澄アンヌの姿は無く、残ったのは私一人。  彼女の言葉が私に揺さぶりを掛ける。 「うる、さい……。私の“境界線”は私で決める……!」  “向こう側”の存在が言った言葉だ、本来なら聞くことすらおこがましい。  故に、私を縛り付ける。 (これが『世界最強の能力者』の周囲)  どうにも彼は私とは真逆の存在を引き寄せる才能があるらしい。  彼には変われる存在。私には……ロクデナシが。  既に空となった焼きそばの器をゴミ箱に放り投げ、来た道を真っ直ぐ戻ろうとした。 「……もしもし」  だが、携帯端末が着信を知らせて来たので、その場で通話口を耳に押し当てる。 〈私です。戻ってくるのが遅いので不安になってたんですよ?〉  この酷く言葉に出来ない気持ちになっている時に、プロジアからの連絡だった。  ……正直、今すぐに通話終了ボタンを押したかった。 「……嬉しいね。そっちはまだ襲われてなかったんだ」  とりあえず嫌味を言うと、彼女は笑い声を漏らした。

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