rossony07

 愛良が背を見せたと思った次の瞬間、立て続けに襲ってくる彼女の白刃。  まるで独楽のように身体を回転させながらの連撃。  とてもナイフ一本で受け切れる重さではない。  いつの間にか落としていたナイフには目もくれず、彼女の“次”を警戒する。  跳躍し、私の頭上を取った愛良はまた樹の幹を蹴り、身体を独楽のように回転させてきた。  地面に飛び込むように転がって、斬撃を回避することには成功した。 (……抉る一撃か。当たったらすごそうだ)  私の背後にあった樹の幹が深く抉れていた。  おそらく肉もああなるだろう。  左右にフェイントを入れながら彼女が迫って来る。  迷うことなく私は左手首をそこそこ背の高い樹の上部へ向けた。  アンカーが打ち込まれるのを確認してから、私の身体は重力の軛【くびき】から解き放たれる。  上昇しながら彼女へ銃を撃つが、あっさり回避される。  ……落ち込んでいる暇はない。  体重を横にかけ、縦軸から横軸への移動に成功した私の着地先はそこそこ頑丈そうな枝の上。  そのまま愛良から隠れるように幹へ身体を預けた私はどこにいるとも分からない彼女へ声を投げる。 「……《姉妹》が第零課に協力するなんて世の中どうなるか分からないんだね」

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