9×9=81

「都市伝説」を利用した、新たなるスパルタ教育。 古代ギリシアでは、スパルタの脅威が市民に知れ渡ったことから、子供たちが悪戯するたびにスパルタを使って脅していたそうな。まさに、今作ではそれが言えるお話でした。「親の心、子知らず」とは言ったものですが、「教師の心配、生徒知らず」という本題には、少し愛情の空回りに切なくなりました。この先生が、少し手法を変えていたとしたら、きっと賞賛に値する教師の鑑に慣れたような気がします。 しかし、評価の点で忘れてはいけないのが、必ず恐ろしいことが待ち受けているということでした。「人の噂は75日」とあるように、広がった噂がねずみ講のように増えていき、だんだんと収拾がつかなくなるというのは、怪談が実現するよりも恐ろしいモノです。それがネットの長所であり、短所なんですよね。 子供を育て、親の望む成績を上げさせることは、今日の教育現場でも日常として取り上げられている課題。精神的にも青臭く、架空を信じやすい生徒の心理を逆手にとって、(手法としては極論でしたね)都市伝説から勉強にのめり込まさせるさせるつもりが、反対にのめり込まれてしまったのは、ある意味呪いとおなじなんだと思います。 結局、広まった呪いの通りにはならなかったのですが、破滅は逃れられなかったというオチは褒め言葉として痛い。でも先生が、それで後悔していないのが唯一の幸いなのかもしれません。 怪談的恐怖に代わって、軽はずみの行動がいかに危ないか、それを「都市伝説」が教えているのだと思います。 この発想は、ありませんでした。
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 見識の深いレビューを有り難うございます。 却って恐縮ですが。 ラストの結末に関しては凄く迷いました。
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私個人の見解ですが、あの結末でよかったと思います。 先生が生徒を思う努力は冒頭からしっかりと伝わってきたけど、だんだんとそれが無下にされてしまい、最終的にはそれどころの騒ぎじゃない結末になって、それでも追い打ちをたたきつけるようなエンドなら、後味が悪くなってしまいますからね。 起承転結の転のところでの泥沼から、あの清潔な終わり方は読み手にもすっきり感を与えていると思います。
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