神楽 佐官

――この世ならぬ天上の音楽は金では買えない。 たいへん美しい小説でした。感動しました。  いくつか思ったことを。作品の批評という高レベルなものではなくて、感想みたいなもので。 この小説の魅力はすでに皆様に書き尽くされているので。 まず、娘が宝石のたくさんついた重い服を着せて衰えていく。 逆に旦那様の音楽がどんどん洗練されていく。 この箇所、すごい気持ち悪かったです。 貧乏人が金持ちに搾取されているみたいで。 いつの世でもそんなものだと思いますけど、心まで支配されていくみたいで。 このあたりの描写は本当に気味悪かったです。 で、娘は逃げる。超ブラック企業から逃げるようなもので。 だけど捕まって殺される。まあ、宝石つけた服を着たまま逃げたというのはあるんですけど……。 最後にこの世ならぬ美しい歌を歌うんですけど、旦那様にしてみれば自分の芸術向上という目的は果たされたわけだから用済みですわ。 使い捨てのカイロ捨てるようなものですわ。 あと執事。 普通、娘一人逃がしたくらいで銃殺までしますかね?  そもそも旦那様の人柄を熟知しているはずの執事が、娘に同情して旦那様を裏切ったりするかなぁ? ……こいつら本当は最初から信頼関係なかっただろとさえ疑ってしまいます。 (公明正大で心優しい旦那様) とか、ふつ~に考えたら皮肉だっつうの。 なんか旦那様、誰かに似ているな~と考えて、一人思い出しました。 ローマの皇帝ネロに。 芸術をこよなく愛好し、母アグリッピナと師セネカと芸術の友ペトロニウスを殺した暴君に。実際のネロは同情の余地のある人物だったかもしれませんが。 なんか執事を殺すとき嘆いてみせるとことなんか、すごくネロっぽいんですよねぇ。態度や仕草が偽善者ですもの。 いやぁ、色々と想像のふくらむ小説でした。旦那様、さっさと破滅すればいいのに♪
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