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いつかの落書きです。ifですので本編と多分関係ありません …………これ、以前、公開しましたっけ? 「――隙だらけだね」  眼前で薄い唇が弧を描いた。 「……なっ!?」 「もーらい」  瞬間、近づいた距離が弾けるようにして広がる。葉月から離れたマツバの手には、丁寧に包装のされた袋が存在した。 「それは……っ!」 「おや、その反応からすると大事なものなのかい?」  にこやかに言うと、マツバは袋を軽く振った。カサカサと儚い音がする。それを見た葉月の頬を一筋の汗が伝う。  ――振ったりして、爆発とか……しないよな?  一瞬すっとんきょうな思考にも思えるが、葉月の心配はもっともである。  何を隠そう、あの袋にはカヲリ特製クッキーが入っているのだ。 「見たところ、手作りのお菓子でも入ってるのかな? 例えば、好きな子から貰ったー、とか、ベタだけど案外バカに出来ないって思う人、いたりするかもね?」  そう言って微笑むマツバは、完璧に葉月を小馬鹿にしていた。  その様子を見て、葉月に苛立ちよりも先に閃くものがあった。 「それは、あの人が作った……っ!」 「あの人? あれ、もしかして当たりだったりするのかな?」 「うるさい、いいから返せ、それは……!」  動揺と焦慮の滲んだ声に、マツバは上機嫌な笑みを浮かべた。 「そんなに大事なのかい? ダメじゃないか、そんなものを戦場に持ってくるとさ」  言葉を切り、葉月に見せ付けるようにして袋の封を開ける。中からお世辞にも形がいいとは言えないクッキーを摘まみ取ると、 「――奪われちゃうかもしれないじゃないか」  口に放り込んだ。 「……っし!」  予想通りに事が進み毒製クッキーが投下されたのを確認した葉月は、小さくガッツポーズをした。それをマツバが不審そうに眉を寄せる。次の瞬間。 「何を……うっ!?」  マツバが呻いた。浅い呼吸を繰り返し、胸を掻くようにして掴む。  盛大に冷や汗を流しながら、マツバは葉月を睨み付ける。 「まさか、盛ったのか……!?」 「いや、天然」  口元に笑みを浮かべながらもその表情は険しい。カヲリの毒製クッキーは、思ったよりもマツバにダメージを与えたようだ。 料理(物理)は恐ろしいですねってお話
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