雪風

  作品、読ませてもらいました。 内容自体はそう珍しいものではなく、よく見かけるありふれた異能バトルものだと思います。 しかしながら、多くの点で非常に安定していて堅実な作品だと感じました。意外かもしれませんが、これほど堅実で安定している作品はなかなか少ないと思います。 登場人物1人1人にしっかりとした個性・魅力があり、とても感情移入がしやすい。 物語の展開や登場人物の会話に、敵となっている妖怪などの特徴・特色を十分に組み込みまた活かしている。その逆も然り。 小説の核となる文章は、人物・心理・風景・情景・言動などの説明と描写が適度に書かれていて、行間や言葉選びの面でも良く、とても読みやすい。 特に、一人称の強みを活かしつつ風景や情景の描写を疎かにせずちゃんと書かれているのは、本当に良かったです。 とはいえ、少し気になった点がなかったわけではありません。 気になった点の一つとして、語り手の視点が頻繁にしかも突然変わることです。 登場人物の口調などの設定がわかりやすくしっかりとしているので、わりとすぐにわかるのですが、いきなり変わると読者側としてはやはり混乱してしまいます。 対策としては、ページ冒頭部に視点者の名前を書くのが最も簡単でしょう。 もう一つ、衣食住の描写があるにも関わらず、主人公達の生活感に何かが欠けているような感じがしました。 これはあくまで個人的にですが、主人公達が住んでいる世界に『名前』がない。 物語の舞台は内容や描写からおそらく日本だと思うのですが、日本の何という場所が舞台なのか……最も身近にありとても重要な要素、しかし普段は特に意識する事のない、地名や店名などの『場所』の固有名が殆どなく、物語の『舞台』が感じられなかったのが理由です。 あくまで個人的にですのであしからず。 少し変な表現かもしれませんが、この作品は安心して読める作品だと思いました。 執筆頑張ってください。

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