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「カナリアの夢」  籠の中の鳥は、何が正しいのかも分からずにただ自由になろうともがき続ける。  例え格子に羽を当てて傷を作っても、飼い主の手をつついたとしても、それを正しく認識出来ないまま、痛みと恐怖を抱えて狭い籠の中で羽ばたくのだ。 「もう終わり?」  膝をつき肩で息をする勇太郎を見下して笑う。  炎のように鮮やかで明るい赤を基調とした服装は、どす黒い血糊で重く塗り替えられている。抉れてざらりとした砂が混じる床に広がる血液は、激しい戦闘の最中に踏みにじられ汚ならしく散っている。 「……まだに決まってんだろ」 「ごめん、決まってるのは暗紅院様への報告の時間だけ。もう、終わりだ」  通告した明人は、必死に立ち上がろうとした勇太郎のその足を躊躇なく射ち抜いた。 「ぐああっ!?」 「時間がないからさ」  明人の色素の薄い美貌を柔らかな微笑が彩り、その存在は儚げを通り越して希薄にすら思える。  銃口が勇太郎の眼前でゆらりと揺れて、定まる。 「おやすみ、勇太郎」
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