Noakku

風呂上がり。 窓から差し込む月光の明るさに、つい外に出てみた。 夜空が異様に明るい。 中秋の名月の夜は何日か前に過ぎているが、それにしても異様に明るい。 薄い曇り空の所為か、月光が月の周りを囲って虹色に輝いている。 雲の鱗のような形も相俟って、見上げる月を神秘的に見せる。 「すっげぇ……」 ――なんて美しい夜空だ。 一言呟くくらいしか、出来なかった。 家の前のいつもの景色は昼間とは違い、月の光に淡く青白く照らされて、どことなく神秘的に見える。 どこか別の場所にさ迷い出てしまったかのようだ。 地面に自分の影がくっきりと映る。 木々の影も。 建物の影も。 淡い景色に濃い色が加わる。 ――なんて美しい景色だ。 私に、この月夜をそっくりそのまま残しておく手段がないのが悔やまれる。 ――湯冷めをしてはいけない。 ずっとこの光景を目に焼き付けておきたいが、そうもいかない。 名残惜しかったが、私は家へと戻った。

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