蒼石

【蒼石の日常】  蒼石はその日、疲れていた。 「りゅう、タッチ」  生後二年と二ヶ月になる愛犬「りゅう」に向かい右手をかざす。すると、先週トリミングを終えたばかりの愛くるしいシー・ズーは、普段から躾けられている通りに左前足を掲げて主人の右掌に重ねた。 「ふっ、かかったな!」  蒼石はシー・ズーの左前足を掴み、邪悪な笑みで言った。 「ナン……ダト……?」  左前足の自由を奪われもがく愛犬を見つめながら、蒼石は裏声で言った。 「俺の目的はただ一つ。この肉球だ」 「ヤメロ!ハナセ!」  低い声と裏声を使い分け、歯を使ってまで抵抗を始めた愛犬を尻目に、蒼石は茶番を始めた。 「この肉球はもともと俺の物だったのだ。今こそ返してもらうぞ!」 「ウ、ウソダ!コレハオレノダ。オレノニクキュウダ」 「いいから寄越せ!このっ、くそっ、取れないだと!?」 「ヤ、ヤメロ!チギレル!」 「このカサついた肉球め!生後半年の頃のあのぷにぷにはどこへいきやがった!こんなものはもういらん!貴様に返してくれる!」  蒼石はそろそろ飽きたので、愛犬の左前足を放した。  解放されたシー・ズーは、やれやれといった様子で蒼石に尻を向ける。 「りゅう、こっち向け」  人差し指で視符を出しながら命令を下す主人に、シー・ズーは体の向きを直し、ちょこんと座る。 「ターッチ」  右掌を向ける蒼石。りゅうは何の躊躇いもなく、当たり前のように左前足をそこに重ねた。 「かかったな!」  シー・ズーの左前足をがっしりと掴む蒼石。こうして、今日も蒼石は無駄な時間を過ごし、小説の更新は見送られるのであった。
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蒼石さんはシー・ズーをかってらっしゃるんですねー 肉球を前に人は冷静ではいられなくなりますよね 笑
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ちなみにこれです/_photo_view?w=23314877
こ、こいつぁやべええぇ(*'ω`*)
すごく楽しそうな遊びではあるけど、なんて迷惑な飼い主なんだ^^; それでも命令に従ってしまうりゅう君可愛いな。 どこまで我慢できるか……下剋上ガンバだ、りゅう君

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