岡田朔

沢山の謎を残したストーリーはそれ故にとても不思議であり、そこが良い点ではあったと思うのですが、ここは敢えて深読みをしたいと思います。 主人公の前に現れた不思議な少女は、想像力を与えてくれるミューズだったのでしょうか、それとも心を奪う妖女だったのでしょうか。 少女に出会い魅入られてしまった主人公は少女を追い求めながら、徐々に成長していく少女の未来の姿を造形していきますが、何かを追い続け形にしたいと思い続けられるものがあるというのは、芸術家にとって幸せな事のような気がします。(一人の男性としては不幸せな気もしますが) 再び少女に出会い少女と暮らし始めた後、妻でもなく娘でもない関係を続けたのは主人公が少女の幼い姿に妻とする事を躊躇したのかなと思ったのですが、それだけではなく、なんとなく少女と関係を持つことはタブーであるような気もするのです。少女という存在は一体何なのでしょうか。もしかしたら、関係を持つことで主人公の想像力は失われてしまうのかな、とそんな事を思いました。 二人が再開するシーンはとても魅力的で美しいシーンでした。少女を追い求めながら大人になり心が擦れつつあるように思う主人公が、少女が像の前に立ちポーズをとりながら過去に戻っていくことで、あの日の心を取り戻していくような。 映像になったら、とても素敵なんだろうなと頭の中で何回も思い浮かべました。 主人公が死んだあと、主人公の遺した作品を持ち帰り『彼ら』の遺した作品たちを見る少女の姿はやはりどこか空恐ろしくも思え、とても印象的でした。 大分深読みになっているだろうと思いますが、素直に読んでも雰囲気の良い素敵な話でした。 秋イベにご参加頂きありがとうございました。 独特の雰囲気を持つ素敵な作品は不思議な世界への入り口のようでした。
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