たすう存在

安直なゲーム系ファンタジーのそれではない、魔法が“生きている”世界観の作品です。 中世ヨーロッパの片田舎なのかなという印象があったのですが、読み直したところ、冒頭に「中世の時代から変わらぬ石畳の通りは」とありましたので、近世から現代にかけてのいずれかの時代が舞台なのでしょう。 読みはじめてまず目を惹いたのは美しい文章と、そのしっかりとした世界観でした。 人々が活き活きと暮らす町の、食べ、歌い、踊る、祭の風景。 そんな中で悲しみを抱えながら暮らす少女と、少女に寄り添う少年。 世界観とはそこで暮らす人々が、自分たちの生きる世界をどう観ているのかのことですが、この作品の冒頭ではそれが実に鮮やかに語られていると感じました。 物語は少年少女の、町の近くに聳える古城を舞台にした一夜の冒険の物語です。 何が潜むかも分からない古城に閉じ込められ、出られない。 王道ではありますが、王道であるということはこれがもっとも効果的に読者をハラハラドキドキするシチュエーションであるということです。 暖を求めての城の散策などは僕もハラハラドキドキしました。 そして物語は畳み掛けるように少年と少女の根幹に関わる魂の物語へと展開していきます。 キアルとエアド、それからスィールシャと両親のやり取りはとても読み応えがありました。 全ての事柄が収まるべきところに収まった鮮やかな結末もとても良かったです。 また、オマケ的な演出に昨年のイベント作品であるコウモリ館のコウモリ人間がゲスト出演していたことにもニヤリとさせられました。 とても素晴らしい、魂の物語をありがとうございました。
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こんにちは。 ご丁寧なレビューをどうも有難うございます。 時代背景は20世紀前半の頃のイメージで書きました。 前回の『コオモリ館~』が70年代頃のイメージだったので、それより数十年前の設定です。 (蝙蝠人間は長寿で成長も遅いという設定で) 門一さんに印象的なタイトルを頂き、かなるさんのラフのキャラクターと組み合わせて大体の構想はすぐに浮かんだので、あとは思い付くままに書き上げたという感じですが。 元々ファンタジーを書いているので、お城や町の描写は似通ったものになってしまうのですが、世界観が伝わりやすかったのでしたら良かったです。 蝙蝠達を登場させたのは、頂いたラフに蝙蝠が飛んでいた
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