『君恋』シリーズの第2章、今作『夢恋』。  主人公・将慶と、前作で幾つもの壁を乗り越え、晴れて結ばれた恋人・麻友を襲う悲劇的な出来事から物語は幕を開けます。 《きっと俺は、今の彼女の世界では一番の要注意人物にリスト入りしただろう……》  将慶が作中で呟く、この一言に衝撃と絶望は集約されていると言っても過言ではありません。  幸せで満ち足りた毎日が、きっとこれからも当たり前のように続く。  そんな考えが、実は何の根拠もない、力を込めて握り締めると、壊れてしまいそうな、そんなガラス細工さながらであることを、主人公と読者は思い知ることになるのです。 (詳しいことは、ネタバレになってしまい書けませんが、是非この主人公の苦悩と決意を「同じ視点で」共有したいのなら、第1作『君恋』から続けてお読みになることをお薦めします!)  ヒロインの親友にして「戦友」でもある由紀。  最愛の人の母親。  そして、麻友を「芸能界の父」として見守り続けて来た、プロデューサー・山崎氏。 ……彼ら、彼女らが将慶(と麻友)の前に訪れた際の、主人公の動揺や罪悪感は非常にリアルでこちらも緊張を強いられる程です。 (自分を嫌と言うほど責めたい時に、周囲の人々から温かい言葉を掛けられると、かえってどうしようもなくなる) 【課題点】  ケータイ小説というスタイルで、今時の若者の純愛を描いた作品でありながら、主人公のモノローグ及び心象描写が、いわゆる「美文調」に近い程の比喩、メタファーで記述されているので、この独特の文体が気になる読者には、かなり気になるかも知れません。  端的に言うと、やや大袈裟な地の文。  そして、今作(と前作『君恋』)は、視点切り替えの際に、主人公・将慶&麻友の目線で描かれるシーンは全て《一人称》なのに、主要登場人物二人が登場しない場面が、《三人称(あるいは、別の人物による一人称)》で書かれて物語が進行しているという、【一人称多視点のザッピングに、三人称がインサートされた】あまり例のない構成になっています。  馴れるとさほど気にならないのですが、この文体・構成は読者を選ぶ(好き嫌いが分かれる)ところかも知れません。 ※随時、追加レビュー・コメントして行きます! 

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