橘巧

いろいろ作品進行中。 今回は死後の世界を舞台にしたファンタジー作品の一文から。 『ライズ・レイド ◎殺しアウだけの世界◎』 「死後の世界だからといって、命は永遠じゃない、重荷を背負いすぎた者は、  段々と肌が黒く変色して、やがて真っ黒になって消えてしまう」 1000年前、貴方が『聖戦』を終結させた後に残ったものは、 ささやかな平和だった。 けれど、人々が本当に望んだものは? 人々が『平和』なんて幻想を享受し続けることは許されない。 『聖戦』という殺戮の果てにあったものなんて、 結局は勝者に与えられる権利であって、また、それに数珠繋ぎさ れた社会であって、それがすなわち『平和』を模したものだとしたら、 世界は、永遠に生贄を排出し続けなければならない。 生贄の上にあって、それが『平和』の形。 けれど、生贄の数は永遠じゃない。 だから1000年、今、再び、『聖戦』が起ころうとしている。 この死後の世界たる、第十三層 コキュートスは長い長いレール。 多くの者を轢き殺し、数に怯え、恐怖し、奪い合う。 化物の皮を一つ一つ捲る様に、 真っ黒な風がすべてを覆い隠す様に、 貴方が再び、このコキュートスに光を放って、その汚れきった 姿をあらわにしなければならない。 私たちには救いも、是非もない。 ただただ、喰い、撒き散らし、その終わりだけを待つだけ。 たった一つ、小さなランタンの火を持って、 瓦礫の上を歩いていく。
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