《闇に香る、桜の芳香と、ノスタルジア》  自動ドアが開かない、というあるあるネタと共に、黒のドーベルマンが喋る?  衝撃的なオープニングのインパクトもさることながら、登場人物たち(全部で3名+1匹)を極限まで絞り、見事な世界観を構築した傑作となっています。  いわゆるフラッシュバック形式で、過ぎ去った青春の時代を回想するフミちゃんの視点と、自身を襲った困難に対し、まるでどこか突き放したようにすら振る舞えるトオルのコントラストが、読む者の心を捉えて離しません。  素晴らしかったのは、予定調和を二転三転させるそのテクニックでしょう。  クライマックスの場面で、フミちゃんが考えていること=読者も「ああ……」と哀しんでしまった二つの現実が、むしろラストのどんでん返しに効いてくるというのは、小説としては非常に高ポイントの技術であり、大いに勉強させて頂きました。  o(^▽^)o  出会いと別れの象徴・イコンとしての、桜。  芳香、舞い散る花びらの儚くも美しい姿、そしてその「色彩」 ……移りゆくもの、変わりゆくもの、更には失われゆくものとしてのメタファーが、心に染み込んでくるのに、読後感は素晴らしく爽やかで心地良いのです。  満点の評価!!
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熊川さん、もったいないほど、素敵な評価、本当にありがとうございます。 至らないところもたくさんあったかと思いますが、丁寧に読み込んで頂いた上、過分なお言葉まで頂戴して、感激しています。 これからも、ますます精進して行きたいと思います。
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