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野井田 区論
舘 追海風
2015/3/7 8:45
配達員の男が去った後、仁花は固まってしばらく立ち尽くしていた。 悟猿もまだ開いた口が塞がらない。男の去り際を、ただ見つめていた。 そのまま、雪の積もる音も響きそうな静寂が広がる。 「「―い…」」 ―そして、二人は同時にそれを打ち破る。 「いや、ドア閉めてってよ…」 「いや、ドア閉めていけよ…」 ――― 「さぁて、説明してもらおうか」 悟猿は胡座をかいて座り込みながら、そう言った。 腕を組み座る姿には、妙な凛々しさがある。 闖入者にシンクロツッコミを決め込んだ後、二人は再び仁花の部屋へ戻っていた。 そして部屋に入った途端、 『あ、そうだ』 と悟猿が呟いて、今に至る。 口調は再びシリアスモード。 穏やかな口振りだったが、声には鋭さがあった。 「…はい」 仁花は正座して、彼の言葉を受け止める。 あんな物を二つも見られてしまった以上、もう言い逃れは出来ない。 (ああぁぁぁ…どうしよう。もう恥ずかしくて死にたい…!) 仁花は俯きながら、顔を真っ赤にしていた。 悟猿の顔を直視出来ない。 「今お前に聞きたい事は山ほど有る」 「はい…」 「だけど俺だって、問い詰めるのは好きじゃない」 「はい…」 ここで恐る恐る視線を上げる。前髪越しに、悟猿の顔が見えた。 ―いつものニヘラ顔とは違う。不覚にも、男らしさを感じる顔付きだった。 (……!) すぐに視線を床に落とす。 俯きが、少し深くなった。 「だから、単刀直入に聞く」 「はい…っ!」 (…来る!) 再び危機を思い出す。手に再び力が入った。 ―ああ、終わった…。もうヤダ、死んじゃいたい…。 あ、そう言えば冷蔵庫にプリン残してたっけ…。 せめてプリンに囲まれて滑らかに死にたかった…! 走馬灯のように、思考が駆け巡った。 「お前―」 「ひっ!」 「あの男は一体何者だ?」 …。 ……。 「…ふぇ?」 何を言って居るんだコイツは? 「いや、見ず知らずの人だったけど…」 「水白州…なるほどそういう名前か。属性に加えて『州』という自らの攻撃拠点をイメージ出来るいい名前だ」 「あの、もしもし?」 「加えてあの横暴さ。客に対して何の躊躇もなく無礼を働くメンタルの強さ…決まりだな」 「え…?何が…?」
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舘 追海風