autumn

「あの月に、もう一度。」 まずはその発想力に心でう~んと唸りました。 世間を大きく揺るがした社会問題と政治問題を大胆に掛け合わせてますね。 内容は少し変えてますが、FS細胞の案件を綴りながら騒動の発端となった研究者の傷心した目線から社会、研究所、マスコミに対する批判と嘲りが読み取れ 日頃から彼女の行く末を案じてた読者としてはとても興味深い内容でした。 実は彼女の口から明かせないいくつもの事情や真実が隠されてるのではないだろうか。 国民も容易に想像できる部分ですね。 脚色が真実味を帯びてるのは、説得力の高いスキルと気品味溢れる文体の賜物ですね。 そして彼女の死に向かう心の複雑な深層は逸品で感情移入させられました。 次の何より驚いたのは自ら命を絶とうと決めた若き研究者が近くて遠い国へ。 絶望と無念な想いを乗せて海を渡る。 果たして拉致された後、待ち受ける運命とはどのようなものか。 軌跡という言葉に最後は、余韻というより想像力を物凄く掻き立てられました。 例えば、国では居場所を失い抹殺されたとしても間違いなく彼女は佐藤でなはない久保方として、辿り着いた地で歓迎され優遇されるでしょうね。 (社会主義、独裁国家の制度、監視に制限はされるでしょうが) 邪魔になった万能細胞の技術が海を渡った瞬間、科学者としては、自国でなし得なかった新たな解決策を手にしたように思えてならないのです。 結局のところ流失は日本にとって損失で同時に一連の出来事を皮肉っているように感じました。 拉致を肯定するものではありませんが、とても面白く拝読しました。 私たちの問題として、その辺もしっかり認識していきたいですね。
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