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野井田 区論
舘 追海風
2015/3/28 0:00
「そうです。つまり被害者と言うのは―」 「仁花本人、ですか」 少女の声を継ぐように、一人の少年が言った。 「なるほど、そう言えばガイシャの死亡推定時刻は?」 「33ページ頃だ」 「となると、僕達がこの部屋をグルグル回っていた時と重なる訳か」 「そしてそれは、私達五人が初めてこのノートのページの中に『仁花』の存在を書かなかった時でもあります」 「ああ!そう言えばそうだ」 「つまり僕達はその瞬間、『仁花』という存在を消してしまった」 「『仁花』という物語を、一瞬でも閉じてしまった」 「…『仁花』を、殺した」 「「「「「…………」」」」」 「…っあああああああぁぁー!どうするんですかこれから!僕達主人公殺したって事ですよね!?これじゃあ物語が―」 さっきの普段口数の少ない少年がいつになく長いセリフを言うと、もう一人の少年が手を伸ばしてそれを制す。 「まあ待ちなって。たかが2ページ書いてないだけじゃん」 「さっきの水白州みたいに生き返らせれば良いんじゃないか?」 「いや、それはさっき私が突っ込んで止めた訳で―」 「待って下さい。水白州はその時に『観測』されているのだから、物語の中に存在していて、つまり生きていると言うことになりませんか」 「おぉ」 「流石、区論先輩ぱねぇっす!」 「いやいやいや、そうはならないですよ!同じ物語の中で殺された人物が生き返ってたらまずいじゃないですか」 「そこはほら、《目標:カオス》を遵守してるって事でOKにして」 「それか上手い言い訳を考えてこのノートに上書きすればいいんじゃ?」 「僕達はクリエイターだ。死んだと思った人間が生きていた理由をつけるのは簡単でしょ」 「た、確かに…」 「そ、そんな横暴な…くっ、こんな事ならもう少し早い書き順なら良かった。そうすれば仁花を殺すことなんかしなかったのに」 「後悔先に立たず、ですかね」 「以下同文」 「っ!そもそも、原因を作ったのは…っ!―」 「―………?はっ!まずい!」突然の大声に、議論と抗議に沸き立つ場は再び静まり返った。 「どうしたんですか、水樹さん」 その問い掛けに、大声を出した張本人が答える。 「…皆さん、このまま会話を続けるのはまずいです」 「何で?」 「ここまでの話の流れを振り返って下さい。曲がりなりにも、『名探偵ホームズ役とワトソン役』が出来上がってませんか?」
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舘 追海風