吉田安寿

 理不尽なまでに自分も自分の周囲も不幸にしてしまう主人公の式見君。最初はタイトルからしてコメディタッチのものを想像していましたが、良い意味で裏切られました。  かなり辛い過去であったと思われる式見君。かなり心が荒んでいる様子で、自分の価値観から外れた人は「クソ」呼ばわり(笑)なかなか辛辣な性格です。  いくら彼が荒んでいるとはいえ、ドラゴン親子とのシーンや、自分の身を案じてくれた兵への感謝など、彼が100%心をなくしてしまった人間ではないことが描かれていてホッとしました。  しかし、それだけに容赦なく姫や護衛を殺してしまうシーンなどは、違和感を覚えました。ドラゴンのことが許せなかったのだとしたら、ドラゴン親子に対する接し方はあまりに冷めていますしね。どうしても殺さなければいけなかったのかな?と思いました。  ただ魔法を授けてもらうためだけであれば、やっつけて追いやるだけで良かったかな?とも思いました。 何か今後の展開の重要な伏線ならばすみません。 子どものドラゴンのセリフで「(父龍が)おっしゃっていましたし」は、謙譲語であれば「申しておりましたし」が正しいかと。 P22「嘘をつくにも」は「嘘をつくなら」の方が自然かと思います。  お話の世界にはとても引き込まれました。式見君が淡々と語る一人称がそっけないけど、読みやすいですし、途中一人称が変わるところがありますが、普通は混乱するのに不思議とそうはなりませんでした。ただし、混乱する人もいるので、最初に誰の視点なのかわかるような配慮があれば良いかと思います。たとえば「俺、カースは…」と言ったような書き出しにする等、です。  魔力の判定はファンタジー!と言う感じでワクワクしましたし、式見君の視点だとどうしても世間を辛辣に見ているので辛いところもありますが、「式見→七味」の勘違いなど、笑いのエッセンスもちりばめられていておもしろかったです。  更新頑張ってください!

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