観客がふと気付くと蜘蛛の糸に絡まっている。こんなのってない。悲劇だ。観客の掴まんとするモノは言葉(意図)しかない。  真っ直ぐに這って進む。もっとも黙って横になれば楽になることも承知済みだ。蝶の喜劇は明示されているのだから。しかしそれはきれいだけれども、美しいけれどもやっぱりこわい。媚薬かもしれないが、劇薬かもしれない。  バランスを崩して片手で掴みながら、観客はふと考える。そう言えば、ほかの観衆は、どうなったのだろう?  捕まったのかもしれない。逃げられたのかもしれない。食べられたのかもしれない。あるいは。  ああ、しかしこの観客も、いよいよ落ちそうな気配である。と言うのは、この観客の蝋で繕った羽では新たな世界を見に行けそうにないからだ。  観客は負けじと踊り狂った、が、当然ここは舞台の外である。そのあとの行方も誰も知らない。もっとも大半の予期する通り、しめしめ、あの観客も×に落ちた、とするのが最も妥当な結末であろう。
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素敵なレビューをありがとうございます。
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いえいえ、こちらこそ素敵な世界へお連れいただきありがとうございますヽ(・ッ・)ノ またこっそりと立ち寄らせていただきます(´ッ`)b

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