幾多野 数多

「百足の怪 終話」  さあ、いよいよだ。  改めて確認してみる。間違いない。  こいつはムカデだ、ムカデの兄貴だ。  ヤスデ先輩じゃねえ。  こうなりゃ人間らしく、危険なものは悪即斬。徹底抗戦だ。  全面戦争だ。総攻撃だ。  猛攻だ。  攻撃に全振りだ。極振りだ。  言葉が通じねえし、意思疎通の手段もねぇ。  だったら、一撃で仕留める。それしかない。  まず、俺は奴の涅槃スタイルを逆手に取る事にした。   雨ガッパを手に取るや、振り回す。バッサバッサと。  ビスケット・オリバみたいに。  振り落とされるムカデ。  表示される勝機の文字。  集まる視線。  怪訝な表情で訝しむガソリンスタンドスタッフ。  蛇行しながらこっちに向かって肉薄するムカデ!  なんだよ、この動きは。マジキメェよ。  ホラーじゃねぇか。  幸いとして、バンコク仕込みのナックムエが炸裂して、事欠きを得た。  ムカデを一撃で仕留められたのは、あれが初めて。危ないところだったぜ。  日曜日のセルフにて、ムカデと死闘を繰り広げる三十代男性が居た。てゆーか僕だったが、それは僕じゃないと思いたい。

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