吾妻栄子

「恐怖のメール」大賞受賞作とのことで、興味深く拝読しました。 ありがちな携帯電話、パソコン同士のメール交換ではなく、パソコンと携帯電話の交信になっている設定に斬新さを覚えました。 また、恐怖がメールの受け手ではなく、むしろ送り手の彼女にとってのものである点、それが次第に受け手である「わたし」たちにも伝染していく展開にも妙味があります。 ラストは本当にやりきれないですね。 どんでん返しが二回ある点が効いています。 私はミステリーが苦手でして、初読では理解できない点が多々あったので何度か読み返して、やっと把握できました。 恐らく犯人は彼女が監禁されていた「窓のない二階の部屋」ではなく、電信柱の見える窓を持つ部屋からその傍に立つ「わたし」たち二人の姿を確認し、偽装のメールを書き送ったのでしょうね。 彼女からの最初のメールに記されていた「窓のある部屋から電信柱に書かれた住所を確認した」という伏線が、「窓のある部屋からは電信柱の近くに来た人間を確認できる」というマジックミラー的な仕掛けに繋がっている。 そして、それが拘束されて身動きの取れない彼女ではなく、誘拐犯に利用されてしまう。 この皮肉が実に巧いです。 ただ、これは細かい点になりますが、二十歳の男子学生である語り手の一人称が女性のように「わたし」とされている描写に違和感を覚えました。 普通は「俺」とか「僕」とか使う気がしますし、物語として敢えて「わたし」を使う必要性も感じません。 それはそれとして、興味深い作品でした。
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コメントありがとうございます。 自分では気がつかない点を指摘していただいて、なるほどと思いました。 参考にさせていただいて、次回からの作品を書いていきたいと思います。 ありがとうございました。
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